Hikari Utada
1981〜
Friedrich Wilhelm Nietzsche
1844
〜1900

ニーチェ的な、あまりにニーチェ的な

 存在の耐えられない軽さに苦しむ軽薄な皆さん、お元気ですか。ここでは、そんな口を開け てパジャマでだらだらネットを見ている皆さんに少しでも重厚さを身に付けてほしいと思っ て、ニーチェ的な人になる方法について書きたいと思います。これを読めばきっとあなたも20 世紀思想最大の震源地になれるはず。レッツルサンチマン!〈さあ、ニーチェの真似をしよ う!〉

言葉;ニーチェはセリフがかっこいい。歴史に残る数々の名言を吐いている。なぜあんなに かっこいいことが言えるんだろうか。その理由を考えてみた。

1. 意味深な物言い。 ニーチェは中々はっきり説明しない。例えば、自分がやりたいことを説明したいときでも、 「わたしにはひとつの使命が与えられている」「それは…的なものとは一切関係が無い」「そ れはいわば…のようなものだ」「つまり…をするということだ」といった感じで4段階くらい に分けて説明する。こうすることによって、もったいぶった重々しい感じが発言に加わる。常 に深い思索を行うニーチェならではの文体だ。 君も、「お腹がすいた、ご飯を食べに行こう」という程度のことでも「我々に与えられた呪い が迫りつつある」「それは我々自身の意思とは一切関係ないまさに動物的な本能によるもので ある」「しかし、それに従うことが人間的な意思の放棄にあたるのだろうか?」「否、かつて わたしがそのようなことをしたことがあっただろうか。この本能に従うことはむしろ人間的 な、あまりに人間的なことである」「そう、それは簡潔に言って食欲と言われる本能であろ う」「ともに、自ら必要な栄養をとり、力を蓄えようではないか」ともったいぶって言ってみ よう。きっと、友達の君を見る眼が大きく変わるはずだ。

2. 巧みな比喩。 ニーチェは比喩がうまい。「あの塩。けっしてぼやけることのないエスプリという塩がまぜら れている」「十月のある日のように晴れやかで深い」など、意味はよくわからないがかっこい い比喩を使う。ニーチェの力強く美しい思想には、このように力強く美しい表現が似合うの だ。

 君も「五月の日曜日のように美しい」とか、「あの輝ける太陽のような秘密」とか、「蜘蛛 の巣のごとき思い」とか、何となくかっこうのよい表現を使ってみよう。意味はよくわからな くてもまずは形から入ることが肝心だ。特に関係の無いものを結びつけた方がよりかっこいい ぞ。

自信;ニーチェは常に自信ありげだ。なぜか。ニーチェの思想は自己を肯定する思想だからだ (多分)。そんなちょっと尊大なところが彼の重厚さにつながっているはず。とりあえずまね してみよう。
1. 強がる。
 ニーチェは常に自分を肯定した。若い頃から病気に苦しんだが、本質的に健康だと主張した し、理解を得られずいろいろ批判されたが、私に悪意を持っているものはほとんどいないと述 べた。そんなニーチェの自己肯定を真似て、君もちょっと強がってみよう。例えば、テストの 点が悪かった時は、「このような邪悪な問題ばかりのテストにおいては、最低点こそが最高の 点数なのだ」と考えればよい。ただの都合のよい発想のようにも見えるがそうではない。これ こそが能動的ニヒリズムなのだ。(←適当。多分嘘)
2. 諸価値の転倒。
 ニーチェは従来のさまざまな価値観を否定し、引っくり返そうとした。例えば、キリスト教 的価値観が影響力を失ったことをはっきり断言した有名な「神は死んだ」という言葉もある。 従来立派であるとされてきたものを厳しく批判することも、ニーチェの価値を高めているの だ。これにあやかって君も周りを批判しよう。例えば、テストの点が悪かった時は、「テスト の点が良いことに浮かれているような人間などはまさに邪悪であり、到底わたしを理解するこ となどできないであろう」と考えるのだ。

苦悩;ニーチェをまさに重厚な存在としているのはその苦悩である。苦しんでいるからこそ ニーチェはかっこいいのだ。ニーチェ的苦悩を身に付けよう。
1. 永遠回帰。
 ニーチェの思想では人間の一生は苦しみの連続だし、いつまで経っても人間は進歩せず同じ ことの繰り返しになる。ニーチェはニヒリズムの極限まで行きつつも、それを乗り越え欲望を 肯定しようとした。そんなニーチェの厳しいニヒリズムが苦悩を生む。君も「何をしても無駄 なのか」ととりあえず悩んでみよう。そんなことしても無駄だけど。
2. 病気。
 ニーチェは若い頃から頭痛やひどい近視や慢性的な胃の痛みに悩まされた。また梅毒に感染 し、最後には精神も病んで狂気の中で死んだ。しかもそれでも弱音を吐かず病気のおかげでわ たしの思想ができたなどと言っているところが彼の魅力だ。とりあえず君も持病のひとつやふ たつは必要だろう。
3. 孤独。
 ニーチェは常に孤独に苦しんだ。かつて親交を結びともに幸せな日々を過ごしたワーグナー とは決別してしまったし、ルー・ザロメという知的で意志が強くしかもセクシーな女性にプロ ポーズしても拒絶され彼女は男とともに彼のもとを去った。何人か友人はいたけど放浪生活を 送ったせいで、文通だけしか友人と連絡を取り合う方法は無かった。しかし、ニーチェはそれ でも人生への感謝を忘れなかった。君も友達や恋人に捨てられて孤独になったらニーチェに近 づけるだろう。捨てられてみよう。

趣味;ニーチェを真似るためにはまずニーチェの趣味嗜好にあわせる必要がある。ニーチェの 好き嫌いを参考にしよう。
 「この人を見よ」という本によれば、大食がよい。長い食事はダメ。間食もダメ。コーヒー もダメ。紅茶は朝だけならいい。と言い、ココアをすすめている。あと、腰をおろしているの はあまりよろしくないらしい。あとドイツ精神は一種の消化不良で、ドイツ料理はだめらし い。また、イギリスの料理もダメで、ピエモント料理が一番らしい。酒は少し飲むとダメだが たくさん飲むと平気になるらしい。いろいろこだわりがある。とりあえずドイツとキリスト教 はとにかく嫌い。君もニーチェになりたかったらまずはドイツ批判からだ。

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